Q 寺社が保有する財産について、固定資産税の課税対象になるか否かを教えてください。
1 固定資産税
固定資産税とは、賦課期日である1月1日現在に存在している不動産などの固定資産に対してその年度分として課される税金のことをいいます。
固定資産税はその固定資産の所有者に対して課されることになります。
固定資産税の課税対象となる固定資産とは、土地や家屋のほかに事業の用に供するための償却資産が対象となります。
2 非課税の範囲
寺社など宗教法人が所有する土地や建物等にかかる固定資産税の取扱いについては、「宗教法人が専らその本来の用に供する宗教法人法第3条に規定する境内建物及び境内地」に関しては「非課税」とされています(地方税法第348条2項3号)。
これは、固定資産税がその資産を基礎とした経済活動から収益が生じることを期待して課税するものであるのに対して、専ら宗教活動のために使用される境内建物や境内地についてはそもそも収益が生じることを予定するものではないため、課税対象から除外されていることによります。
したがって、宗教法人においては「専らその本来の用に供していること」と「宗教法人法第3条に規定する境内建物及び境内地に該当すること」の2つの要件を満たす場合に固定資産税が非課税として取り扱われることになります。
逆にいうならば、これら2つの要件を充足しない場合においては、寺社の所有する不動産といえども、一般と同様に固定資産税を支払わなければならないということです。例えば、客観的にみて境内地に該当する土地であったとしても、第三者に駐車場として有償で賃貸しているようなケースにおいては、「専らその本来の用に供している」とはいえないため、その土地については通常どおり固定資産税が賦課されることになるのです。
3 具体的なケース
宗教法人が保有する財産について、固定資産税が課税されるか否かにつき、以下のとおり代表的なケースを挙げてご説明します。
① 境内地・境内建物
宗教法人法第3条に規定する境内地・境内建物については、宗教法人として専ら本来の用に供されている場合であれば固定資産税は非課税となります(地方税法第348条2項3号)。
② 庫裏・社務所
宗教法人の所有する庫裏、社務所等は、専ら宗教の用に供するものと認められており、他人に貸しているなどその使用の内容が明らかに宗教の用以外の用に供しているような例外的な場合を除き、固定資産税は非課税となります。
③ 拝観料を徴しているお堂
お堂それ自体はその本質上宗教目的に使用されるものであることは明らかなものです。
それゆえ、拝観料を徴しているか否かにかかわらず、宗教と全く関係の形にて使用している等の例外的な場合を除き、専ら宗教本来の用に供しているものとして固定資産税は非課税となります。
④ 駐車場
法事などの際に檀信徒が集まるために無償にて使用させているものであれば、宗教活動の用に供しているものとして固定資産税は非課税となります。
他方、檀信徒以外の第三者を対象に有償にて使用させている場合は、専ら宗教の用に供しているものとはいえず、一般の有料駐車場の土地と同様に固定資産税が課税されることになります。
⑤ 墓地
墓地については地方税法第348条2項4号にて非課税と明記されており、当該墓地につき永代使用料や管理料を徴収しているか否かにかかわらず、固定資産税は非課税となります。
⑥ 納骨堂
納骨堂については、墓地と異なり、非課税とする旨の直接的な定めがありませんので、地方税法第348条2項3号が定める「宗教法人法第3条に規定する境内建物及び境内地」に該当する場合に限り、固定資産税の非課税対象となります。
納骨堂への固定資産税課税の賦課については、宗旨宗派を問わず、檀信徒にもならずに使用することができるとの納骨堂のケースにつき、「宗教法人が専らその本来の用に供する宗教法人法第3条に規定する境内建物及び境内地」には該当しないものとして、東京都が固定資産税及び都市計画税を賦課した処分につき適法であると判断した東京地裁平成28年5月24日判決が大変参考になります。
この点については、「 納骨堂と固定資産税」の記事に詳細がありますので本記事と併せてご参照ください。
⑦ 参拝者の休憩所や食堂として使用される建物
参拝者等のための休憩所や食堂、結婚披露宴会場として使用される建物については、一般的には専ら宗教法人の本来の用に供するものとは言い得ませんので、固定資産税の課税対象になる可能性があります。
⑧ 寺社運営の幼稚園として使用される建物
宗教法人が運営する幼稚園において、直接に保育の用に供するための園舎等の建物については固定資産税は非課税となります(地方税法第348条2項9号)。
⑨ 年に数回程度しか使用しない建物
年に数回程度の頻度でしか檀信徒等にお披露目しない等の取扱いであったとしても、当該施設がその性質上宗教目的として使用されるものである限り、使用回数や頻度にかかわらず、専ら宗教の用に供しているものとして固定資産税は非課税となります。
4 本件ケースにおける対応
ご相談のケースにおいては、寺社の保有する財産と一口に言っても、その財産の性質や使用態様の具体的状況によって、地方税法第348条2項3号規定の「専らその本来の用に供していること」、「宗教法人法第3条に規定する境内建物及び境内地に該当すること」の要件を充足して固定資産税が非課税になるのか否かが大きく異なってくるところです。
弊所は寺社など宗教法人の税務にも精通した税理士とも提携しており、これら寺社の所有する財産にかかる固定資産税のケースについても適切なチームを組んでワンストップサービスをご提案いたします。
寺社の保有する財産にかかる固定資産税ケースの具体的な解決については、弊所にて迅速かつ適切なアドバイスを申し上げることが可能ですので、いつでもお気軽にご相談ください。