Q 弊寺では境内に幼稚園を併設して運営をしています。宗教法人が行う「公益事業」についてどのような制限があるのでしょうか。
1.宗教法人が行う事業活動
寺社は宗教法人であり、その主たる目的は「宗教の教義を社会一般に広めること」、「宗教としての儀式行為を執行すること」、「信者の宗教的な教育育成」の3つです。
宗教団体がこれら3つの目的を達成できるために、宗教法人法は宗教団体に対して法律上の能力たる法人格を付与しているのです。
それゆえ、宗教団体たる寺社にて行うことができる「業務」及び「事業」(宗教法人法第1条1項)は、必然的に当該3つの目的達成に必要な活動及びこれに関連するものに限られることになります。
宗教法人が行う「業務」とは寺社が行う法事その他宗教活動そのものを意味しています。
これに対し、「事業」というのはそれ自体は宗教活動そのものではありませんが、不特定かつ多数人の利益を図る事業としての「公益事業」と収益を目的とする事業などを含む「公益事業以外の事業」とに分けられます。
2.公益事業
「公益事業」とは、例えば教育、学術、医療、社会福祉などに関する事業のことを指し、寺社が経営する幼稚園や保育園、宗旨宗派を問わない霊園経営などがあります。
寺社の目的は確かに「宗教の教義を社会一般に広めること」、「宗教としての儀式行為を執行すること」、「信者の宗教的な教育育成」の3つが柱となりますが、この目的のみに限定されてしまうことは社会で困っている弱者一般の救済という宗教者としての本来的な活動ができなくなってしまうことにもなりかねません。
そのため、宗教法人法は、「宗教法人は、公益事業を行うことができる」(第6条第1項)として寺社が信者か否かにかかわらず不特定多数の社会一般の人々のために公益活動ができるという当然のことを明記しました。
寺社が公益活動を行う場合には、行おうとする公益事業の種類(幼稚園、保育園、霊園、美術館など)やその管理運営方法を寺院規則に明記し、所轄庁(文部科学大臣または都道府県知事)の認証を得なければなりません(宗教法人法第12条第1項7号)。
3.公益事業以外の事業
宗教法人が行うことができる公益事業以外の事業としては、共益事業と収益事業等があります。
寺社が行う事業が「公益事業」に該当するのか、「収益事業」に該当するのかによって法人税法上その所得が法人税の課税対象となるなど大きな影響を受けることになりますので、寺社にて新規に事業を行う際には適切かつ慎重に判断しなければならない点にご注意ください。
寺社が行う収益事業については、Q23をご参照ください。
4.本件ケースにおける対応
寺社である以上、宗教団体として公益活動を行うことができます。ただ、行うべき公益活動については適切に所轄庁に届出をするなど適切な手続を踏んでおく必要があります。
また、行おうとしている活動が公益活動に当たるのか、収益活動に当たるのかによって法人税法上その所得が法人税の課税対象となるなど税務面を含む法規制が大きく変わってくるところですので、この点の判断についても専門家に相談することをお勧めいたします。
寺社が行う公益活動については、弊所にて迅速かつ適切なアドバイスを申し上げることが可能ですので、いつでもお気軽にご相談ください。