お寺とインボイス制度

Q 2023年10月から『インボイス制度』が始まりました。お寺にはインボイス制度は関係ないと思っていたのですが、出入りの業者さんから「インボイスに登録していますか」と聞かれて困ってしまいました。お寺でもインボイス制度は登録しないといけないのでしょうか?

1 『インボイス制度』とは

 『インボイス制度』とは、2023年(令和5年)10月1日からはじまった複数税率に対応した消費税の仕入れ税額控除の方式のことをいいます。税務署長に申請して登録を受けた課税事業者である「適格請求書発行事業者」が交付する「適格請求書」(いわゆるインボイス)を保存することが消費税の仕入れ税額控除の要件となります。

 課税事業者は売上げにかかる消費税を申告・納付しますが、その事業者は仕入れの際にも消費税を支払っていますから、正確な消費税額を計算する際には、売上にかかる消費税額から仕入れにかかる消費税を差し引いて(仕入れ税額控除)計算することになります。

 インボイス制度は、課税事業者がこのような消費税の仕入れ税額控除を受けるためには取引先が発行する適格請求書(インボイス)の保存が必要であるとするものです。

2 インボイスが与える宗教活動への影響

 かように、インボイス制度は課税事業者が消費税の仕入れ税額控除のメリットを受けるためのものです。

 この点、宗教法人の宗教活動としてのお布施にはいわゆる「対価性」がありませんので、お寺の宗教活動それ自体に対しては消費税は課税されません。かように宗教活動のみを行っているお寺の場合にはそもそも消費税を納めていませんので、それにかかる仕入れ税額控除も関係なく、檀信徒からインボイスを求められることはないでしょう。

 その意味においては、宗教活動のみを行っているお寺(直近2年間の消費税課税売上が1000万円以下)にとっては、インボイス制度のスタートは運営管理上直接の影響はないと言えます。

   

3 インボイスが与える収益活動への影響

 その一方で、純粋な宗教活動以外にも、絵葉書やカレンダーの販売や霊園事業、駐車場事業などの収益事業を行っており、その売上げが年間1000万円を超えるようなお寺の場合においては、宗教法人といえども消費税が課税されることになりますので、インボイスの登録を検討する必要があります。

 この場合、取引先業者からインボイスを求められたにもかかわらずお寺がインボイスを発行することができないということになれば、価格の変更に応じざるを得なかったり取引機会を喪失したりなどの不利益をお寺が被るおそれが出てきてしまいます。

4 本件ケースにおける対応

 お寺においてインボイスを登録するべきか否かは、そのお寺が収益事業を行っているか、行っているとしてその収益規模がどの程度かなどの状況により大きく変わってくるところです。インボイス制度を正しく利用することはお寺が提供する商品やサービスの価格設定の適正化や経理の透明化を高めることにも繋がります。ひいては檀信徒や取引先とのより深い信頼関係の醸成にも寄与するところです。

 弊所は寺社など宗教法人の税務にも精通した税理士とも提携しており、これらインボイス制度の登録の是非についても適切なチームを組んでワンストップサービスをご提案いたします。 お寺のインボイス制度のお悩みの具体的な解決については、弊所にて迅速かつ適切なアドバイスを申し上げることが可能ですので、いつでもお気軽にご相談ください。

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