境内や仏像などの無断撮影やSNSへの投稿について

Q 近年、寺院を訪れた参拝者や観光客が、境内や本堂、仏像などを自由に撮影し、その写真や動画をSNSや動画投稿サイトへ掲載するケースが増えています。また、撮影した写真や動画をYouTube等へ投稿して広告収入を得たり、商業目的で利用したりする事例も見受けられます。寺院としては、このような撮影やSNS投稿、商業利用を自由に認めなければならないのでしょうか。また、寺院として制限を設けることはできるのでしょうか。

境内や仏像などの無断撮影やSNSへの投稿について

1 寺院における撮影トラブル

近年、スマートフォンやSNSの普及により、寺院で写真や動画を撮影すること自体は一般的な光景となりました。

しかし、その一方で、

・本堂内での無断撮影

・法要中の動画撮影

・他の参拝者を無断で撮影する行為

・ライブ配信

・コスプレ撮影

・ドローン撮影

など、寺院における撮影を巡るトラブルも増加しています。

寺院は多くの参拝者に開かれた施設ですが、同時に信仰の場でもあります。そのため、撮影に関する問題は単なるマナーの問題ではなく、寺院の管理や宗教活動にも関わる法的問題となる場合があります。

2 寺院の施設管理権

寺院には境内や本堂等の施設を適切に管理する権限があります。

そのため、寺院において、

・ 境内での撮影禁止

・ 本堂内の撮影禁止

・ 法要中の撮影禁止

・ 三脚や大型機材の使用禁止

・ ドローン撮影禁止

などのルールを設けることは管理権に基づき原則として可能です。

また、撮影自体を全面的に禁止するのではなく、「本堂内のみ撮影禁止」、「文化財のみ撮影禁止」、「僧侶の許可を得た場合のみ撮影可能」など、場所や目的に応じたルールを設けることも考えられます。

寺院は公道や公園とは異なり、寺院の管理下にある施設です。そのため、参拝者に対して合理的な利用ルールを定めることは、寺院の適正な管理のためにも重要であると考えられます。

3 SNS投稿の問題

仮に参拝者や観光客に撮影することを認めたとしても、それをもってその写真や動画のSNSへの投稿や利用まで包括的に承諾したことを意味するものではありません。

例えば、法要に参加している檀信徒や、読経中の僧侶、他の参拝者などが写り込んでいる場合には、それらの方の肖像権やプライバシー権への配慮が必要となります。また、法要や祭礼など宗教儀式の様子が本人の意思に反して公開されることにより、寺院と檀信徒との信頼関係に影響を及ぼす場合もあります。

そのため、寺院としては、

・ 法要中の撮影禁止

・ SNSへの投稿禁止

・ 僧侶や他の参拝者が写り込んだ写真の投稿禁止

などのルールを定め、あらかじめ境内やホームページ等で周知しておくことが望ましいでしょう。

4 文化財への配慮

仏像や仏画、襖絵など文化財に指定されているものについては、通常の建物等とは異なる配慮が必要となる場合があります。

例えば、フラッシュ撮影や大型機材を使用した撮影が文化財の保存に影響を及ぼすことも考えられます。

そのため、文化財については、通常の建物等の場合以上に、保存の観点から撮影を制限したり、撮影方法を指定したりする運用も検討すべきところです。

5 商業利用の問題

近年では、寺院で撮影した写真や動画を、YouTubeで配信して広告収入を得る、SNSを利用した企業広告に使用する、写真集や出版物に掲載する、商品販売や営業活動に利用するなど、商業目的で利用する事例も見受けられます。

寺院として参拝目的の撮影を認めていたとしても、当然に商業利用まで許諾したことを意味するものではありません。

そのため、撮影した写真や動画について、

・ 商業利用は禁止すること

・ 商業利用は事前許可制とすること

・ 取材や営利目的の撮影は別途申請を求めること

などのルールをあらかじめ設けておくことが望ましいでしょう。

6 撮影ルールの整備

撮影を巡るトラブルを防止するためには、あらかじめ寺院としてのルールを明確に定めておくことが重要です。

例えば、境内への掲示、ホームページへの掲載、パンフレットへの記載などにより、

・ 撮影可能な場所

・ 撮影禁止区域

・ SNS投稿の可否

・ 商業利用の可否

・ ドローン撮影の禁止

などを分かりやすく周知しておくことが望ましいでしょう。

明確なルールを設けておくことにより、寺院と参拝者または参拝者同士での無用なトラブルを防止しやすくなります。

撮影ルールを定める場合には、単に禁止事項を列挙するだけでなく、その理由についても併せて説明することで、参拝者の理解と協力を得やすくなります。

7 本件ケースにおける対応

寺院は地域社会に開かれた施設である一方、宗教活動を行う場であり、静謐な環境や宗教的尊厳を維持することも重要な役割です。

そのため、境内や本堂等における撮影やSNS投稿については、寺院の施設管理権に基づき合理的なルールを定めることができます。

また、参拝目的の撮影を認める場合であっても、SNSへの投稿や商業利用については別途ルールを設け、必要に応じて事前許可制とすることも有効な方法です。

寺院としては、「撮影は自由」か「すべて禁止」という二者択一ではなく、参拝者の利便性と寺院の宗教的尊厳・文化財保護との調和を図りながら、適切な撮影ルールを整備することが重要です。

寺院における撮影やSNS投稿、商業利用に関するルールの整備、利用規約の作成、参拝者とのトラブル対応その他寺院施設の管理に関する法的問題については、弁護士法人 永 総合法律事務所にて迅速かつ適切なアドバイスを申し上げることが可能ですので、いつでもお気軽にご相談ください。

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