墓じまいと離檀料トラブル

Q 弊寺の古くよりのお檀家から「今度、遠方に引越すことになったが、もう高齢なのでなかなかそちらにお参りに行けそうにもない。この機会に菩提寺を変えようと思うので、檀家を止めさせてもらいたい」と言われてしまいました。弊寺では離檀の際にはいつも離檀料の支払いをお願いしているのですが、そもそも「離檀料」とはどのようなものでしょうか。

1 「離檀」とは

 檀信徒がその菩提寺での檀信徒をやめてお寺にあるお墓を撤去処分(墓じまい)することを「離檀」といいます。

 最近、檀信徒の離檀は全国的にかなり増えてきており、主な離檀の理由としては、檀信徒が遠方に引越すことで距離的に菩提寺に行きにくくなることや、檀信徒の高齢化に伴い遠くの菩提寺にお参りにいけなくなること、少子化による檀信徒の後継者不在や、他の宗教への入信に伴う離檀などがあります。昨今急速に広がってきている少子高齢化の波により、長年にわたって培われてきたお寺と檀信徒との信頼関係が徐々に弱まってきていることも大きな背景要因なのかもしれません。

2 離檀に必要な手続

 離檀というのは、上述のとおり菩提寺での檀信徒をやめて墓じまいをすることですから、離檀の際には菩提寺にそれまで使っていたお墓の場所を返還する手続が必要となります。

 「墓じまい」とはいえ離檀の手続は檀信徒だけで勝手にできるものではありません。具体的には、菩提寺のお墓で管理してもらっていたお骨などにつき「埋葬証明書」を菩提寺から発行してもらう必要があります(これにより従前のお墓からお骨を出して移動させることができるようになります。)。その際には、そのお墓に埋葬されていたご先祖様のお名前やお骨の数、命日、納骨日などの情報が必要となります。これらについては過去帳などで管理していますので菩提寺に確認するとよいでしょう。

 墓じまいをした後に、他のお寺の墓地に改めてお墓を移す場合においては、さらに移転先の役所から「改葬許可証」を発行してもらう必要がありますが(これにより新しいお墓にお骨を埋葬することができるようになります。)、そのためには移転先のお寺にて「改葬受入証明書」をあらかじめ発行してもらう必要があります。      

3 離檀料とは

 離檀に伴い菩提寺の檀信徒をやめて墓じまいをするにあたっては、慣習的に檀信徒から菩提寺に離檀料として相応の金銭をお支払いするのが一般的です。

 「離檀料」とは、長年にわたってご先祖様のお墓を守ってもらっていたことや法要などにて供養してもらうことでお世話になっていたことに対する檀信徒から菩提寺への感謝とお礼の気持ちを表すものです。

 このように離檀料は菩提寺への気持ちですので、その支払いはあくまで慣習に過ぎず、離檀の際には檀信徒が必ず菩提寺に支払わなければならないといった法的義務を伴うものでは全くありません。ですから、仮に、菩提寺から檀信徒に数百万円など高額な離檀料の支払いを一方的に求められた場合、これに納得することができなければ檀信徒としてはその支払いを当然に拒否することができます。

 とはいえ、既に述べたとおり、離檀料はご先祖様が長年お世話になったことに対する菩提寺への感謝の表われですので、通常のお布施と同様に、感謝の気持ちを表わす金額を包んでお支払いするのが良いかと思います。

4 離檀料の金額

  とはいえ、離檀料として具体的に一体いくらお支払いするべきかというのは檀信徒にとってなかなか悩ましいところです。

 離檀料についてもお布施と同様に具体的にいくらといった定められた相場があるわけではありません。

  ただ、離檀の際には上記のとおり、菩提寺には埋葬許可証の発行などの諸手続のほか、お墓の解体工事、お墓から仏様の魂を抜く法要(閉眼法要)などをする必要がありますので、菩提寺には相応の手間をかけることになります。

 離檀料の金額としては、これら菩提寺の手間も含めて、離檀する檀信徒と菩提寺とのこれまでの関係性やお寺がその地域で果たしている立場などにもよりますが、一般的には「数万円から20万円程度」とするケースが多いように思います。具体的な金額については、これまでに菩提寺に納めてきた法要1回分のお布施額を目安にすると良いでしょう。

 いずれにせよ、離檀料のお支払いについては明確な基準があるわけではありませんので、菩提寺と檀信徒とでよく話し合いながら双方にとって負担のない金額を決めるのが良いかと思います。

5 本件ケースにおける対応

  檀信徒が離檀する際の離檀料の支払いについて、菩提寺から多額の離檀料を一方的に請求されたなどのトラブルとなり消費者センターが介入するような揉めごととなるケースが最近増えてきています。大変残念なことではありますが、これも長年にわたって培われてきたお寺と檀信徒との信頼関係が徐々に弱まってきていることのひとつの表われなのかもしれません。

 長年にわたり良いお付き合いをして頂いていた檀信徒と最後の離檀のタイミングで険悪な形でのお別れになってしまうのはお互いにとって大変不幸なことです。離檀に伴う墓じまいの手間と実費などにより離檀料は変わって参りますので、離檀料の設定と離檀を求める檀信徒との交渉等も含め、あまり大きく揉めるようであれば専門家に相談されるのも良い方法といえるでしょう。

 墓じまいに伴う離檀料トラブルの具体的な解決については、弊所にて迅速かつ適切なアドバイスを申し上げることが可能ですので、いつでもお気軽にご相談ください。

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