墓地経営主体の破産

Q 最近、墓地経営の厳しい経営状況がよく取り沙汰されています。墓地や霊園の経営主体が破産した場合、檀信徒等の墓地使用権はどのように扱われるのでしょうか。

1  墓地経営会社の破産

 墓地は先祖を祀る場所であり、宗教的尊厳や崇拝の対象となる特別な施設です。それゆえに、墳墓には墓埋法に基づいて都道府県知事の許可を得た敷地内においてのみ設置できるものであって容易には移動させられません(固定性)。また、墳墓の所有権は相続人が途絶えて無縁とならない限り永久的に承継されるものです(永続性)。これら墳墓の性質に照らし、墓地運営には安定的な経営が極めて重要な要素となります。

 しかしながら、墓地の安定的な経営は現実的にはなかなか難しい部分も多く、昨今においても墓地経営の破綻事例は数多く出てきているのが現状です。

 墓地経営が破綻する原因として、厚生労働者は以下の3つの背景事情を掲げています。

 ① 墓地使用権の販売等により一時的に多額の金銭が集まることによる危うさの存在。

 ここで得た金銭を墓地経営以外の他の事業の資金に回した結果回収不能になってしまうケースや、他社の経営介入により利益を奪い取られてしまうケースがあります。    

 ② 金利低下による資産運用が難しい状況。

 バブル期に照らして最近は金利が低いことから経営がより難しくなっています。   

 ③ 墓地経営の見通しの難しさ。

 もともと長期的な需要の予測が難しいことに加えて、最近での少子化、核家族化の進行に伴う家族意識の希薄化が拍車をかけ、将来的な見通しがより難しくなっています。

2 墓地使用契約の存続の有無

 墓地や霊園の経営主体が破産した場合、墓地の経営をそれ以上継続することができなくなりますが、その場合、霊園等の財産は破産法の手続に則って管理及び処分されることになります。そのため、霊園の債権者たる墓地使用権者は破産法の手続によってのみ自身の権利行使が可能となります。

 この点、墓地や霊園等の経営主体が破産した場合の墓地使用権が破産法上どのような取り扱いになるのかについては、墓地使用権の法的性質に基づく異なります。

 墓地使用権の法的性質については、「永代借地権」または「慣習上の物権」、「土地の使用貸借契約に基づく使用借権」など諸説があり、法律上はもちろんのこと、判例上においても明確に定まっておりません。

 ただ、墓地使用権の法的性質が上記のいずれであったとしても、墓地経営者には墓地使用者に対して墓地を引き続き使用させるべき義務があり、墓地使用者は年会費等を支払うべき義務を負い続けています。とするならば、双方未履行の双務契約があるといえ、破産法第53条が適用されることにより、破産管財人は墓地使用契約の解除または債務の履行を選択することができ、破産管財人が墓地使用契約の解除を選択した場合には墓地使用者は墳墓を撤去して墓地を明け渡さなければならないようにも思われます。

 しかしながら、一般的な財産の場合を想定した破産法第53条を上述した「固定性」、「永続性」といった特別な性質をもつ宗教的尊厳の対象たる墓地にも機械的・形式的に適用することはおよそ適切ではありません。

 そこで、墓地の固定性・永続性等の特殊性に照らし、墓地使用契約については破産法第53条の適用を排除し、当該墓地に実際に墳墓が存在している場合においては破産管財人による解除を否定すべきと考える余地があります。

 この場合、墓地使用契約は墓地の経営主体が破産した後においても引き続き存続することとなり、墓地が不動産として第三者に換価処分される場合にも「墓地使用権の負担付き」として処分されることになります。

 かように解釈することによって墓地使用者の権利を保護することが墓地の宗教的特殊性に照らしても妥当と言えるでしょう。

 墓地経営主体の破産に伴うトラブルの具体的な解決については、弊所にて迅速かつ適切なアドバイスを申し上げることが可能ですので、いつでもお気軽にご相談ください。

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