Q 弊寺は近隣の住民から「住居を建ててそこに住みたいので寺の土地を一部貸してもらえないか」と頼まれ、敷地の一部を貸すことにいたしました。その際に毎月の地代を決めなければならないのですが、一体いくらに設定すればよいのでしょうか?
A 地代については、原則当事者間で話し合いがまとまるのであれば、自由に決めることが可能です。話し合いの材料がないということであれば、以下の諸方法を参考に、大まかな参考数値を把握したり、不動産業者に相談してみるといいでしょう。
1 相当な地代を把握する重要性
上記でも述べたとおり、地代は当事者間で自由に協議の上定めることが可能です。
しかし、設定した地代が将来的に不相当になってしまった場合、地代を一方的に変更することはできず、協議がまとまらない場合には、法的手続きを検討しなければならないため、余計な期間、費用が発生し、不利益になる場合があります。
そのため、地代の決定にあたっては、契約当初の時点から、どの程度が相場といえるのか、適正地代を把握した上で契約締結を行うことが望ましいといえます。
2 地代の算定方法
それでは、地代を算定するにあたっては、どのような方法があるのでしょうか。本項では、主要なものをいくつかご紹介します。もっとも、これらの方法のどれか一つだけを参考にするというよりも、複数の方法で算出された数値に加えて、当事者の個別的な事情などを総合的に考慮する形になることが実際には多いでしょう。
本当に正確な地代を把握するのであれば、不動産鑑定によるべきといえますが、鑑定費用もかかってしまうことから、まずは大まかにでも相場の数字を把握することが大切です。不動産業者に相談してみるのもいいかと思います。
① 積算法
対象不動産の期待利回りを基準として、地代を算定する手法になります。土地の基礎価格(底地価格)×期待利回り+必要諸経費で算出されます。
② 賃貸事例比較法
対象不動産と類似する賃貸借の事例等を集め、個別事情等に応じた補正を行い、そこから算出される更地価格に対して地代料率を乗じて算定するものです。地代料率は、住宅地でおおむね2~3%、商業地で概ね4~5%とする例が散見されます。
③ 公租公課倍率法
対象不動産の固定資産税・都市計画税などの公租公課を基準価格としたうえで、一定の補正倍率を乗じた数値を月数で割ることによって算出されるものです。補正倍率にはばらつきがありますが、住宅地で3~5倍、商業地で5~8倍の例が散見されます。
3 地代と税金
寺社が所有する土地について住居を建てるための土地として第三者に貸し付け、その対価として地代を得る行為については、「不動産貸付業」に該当するのが原則です。
しかし、その地代の金額がその土地の固定資産税額及び都市計画税額の合計額の3倍以下である場合で一定の条件を満たすものである場合、その貸付は「低廉貸付」であるとして収益事業としての「不動産貸付業」には該当しません(法人税法施行規則第4条参照)。
4 小括
上記のとおり、地代の設定にあたっては、相場を踏まえた適切な決定が必要なほか、寺社にとっては、支払われる地代が課税対象になるか否かという観点でも留意が必要といえます。借地権の設定については、地代のみならず、計画期間、借地権の種類など複合的な観点で検討を進める必要があり、早期から専門家のアドバイスを受けることが重要です。
弊所にでは、弁護士による迅速かつ適切なアドバイスを申し上げることが可能ですので、いつでもお気軽にご相談ください。