お寺における賃貸借と使用貸借の区別

Q 土地などを賃貸するにあたって、法律では、「賃貸借」と「使用貸借」の区分があると聞きました。それぞれどのような違いがあるのでしょうか。

 第三者に対して土地や建物を貸し出す場合には、その契約内容などに応じて賃貸借(民法601条)や使用貸借(民法598条)の区別があります。通常、寺社にて想定しているであろう第三者への土地の貸借などは「賃貸借」契約の適用を受けることになるでしょう。

1 「賃貸借契約」とは

 賃貸借契約とは、民法601条によれば「当事者の一方がある物の使用収益を約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと」、「引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約すること」の二点を内容とする契約です。「貸借」である以上、いずれかの時点で目的物の返還が想定されていることはいうまでもありません。

 そのため、賃貸借契約の要素として重要な点は使用収益に対して賃料という対価が発生することにあるでしょう。一般的に寺社などでみられる「借地」などは賃貸借契約にあたるといえます。

2 「使用貸借契約」とは

 使用貸借契約とは、民法593条によれば「当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして」、「契約が終了したときに返還を約すること」を内容とする契約です。使用貸借もまたいずれ目的物が返還されることは当然ですから、使用貸借の要素として重要なのは目的物について「無償」で使用及び収益を許している点にあるといえます。

 使用貸借は、通常だと親族間の貸借など一定の関係性が存在する場合に便宜を図るものとしてよく見られる契約形態といえます。なお、ここでいう「無償」とは文字通り「タダ」である場合だけではなく、当該目的物について通常支払うであろう対価より著しく低廉な場合などにも適用があります。

3 賃貸借契約と使用貸借契約の違い

 上記の点から見ると、賃貸借契約と使用貸借契約は、主として、使用収益について対価を伴うかで異なるといえます。この点は特に借主保護の点で違いを生じます。

 使用貸借の場合、使用収益に対価を伴っていない以上、いうなれば貸主の好意があればこそ契約関係が存続しているといえます。そのため、使用貸借は期間満了時(使用収益の目的を定めているときには、その目的を達成した場合)に終了するほか、使用収益の目的や期間を定めていなければ貸主はいつでも使用貸借契約を解除することが可能です(民法597条、598条参照)。この他、借主死亡時にも当然に契約関係は終了するため、相続の対象にはなりません。借主は使用貸借によって借り受けた目的物をいつまで使用できるかについて不安定な地位にあるといえるでしょう。

 賃貸借契約の場合、特に不動産(土地、建物)については、使用貸借とは異なり、相当な賃料を支払った上で使用収益する上、不動産などの目的物は生活の本拠として借主にとって重要であることに鑑みると借主保護の要請が高いといえます。

 そのため、建物所有目的の賃貸借については借地借家法の適用を受け、貸主は更新拒絶や解約の申し入れ等について「正当の事由」が要求されることになり、借主は安定的に目的物を使用収益出来る反面、貸主にとって借地契約等の終了は定期借地権等の場合を除けば容易ではなくなってしまうのです。

4 小括

 上記のとおり、賃貸借と使用貸借は、主に賃料の有無によって区別され、その違いが契約の終了が容易であるか否かの違いにつながってきます。寺社が第三者に土地や建物を収益させる場合、通常は賃貸借契約を締結することになるでしょうから、使用貸借とは異なり、借地借家法の適用を見据えた上での対応を検討する必要があります。

 借地契約の性質などの相違も踏まえた具体的な対応については、弊所にて迅速かつ適切なアドバイスを申し上げることが可能ですので、いつでもお気軽にご相談ください。

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