お寺における地代の増減額

Q 弊寺では敷地の一部を第三者に貸しておりますが、最近の地価の上昇などにより、現行賃料が相場より低廉になってしまいました。これを機に賃借人に対して賃料増額を求めようと思いますが、どのように進めていけばいいでしょうか。反対に、賃借人の方から、賃料が高すぎるなどとして現行賃料の減額を求められた場合などはどうなりますか。

 賃料の「増額」については、当事者間において、関係性に配慮しつつ適切に合意を形成するに越したことはありませんが、合意が難しいような場合には、地代増額請求権(借地借家法11条1項)の行使により、裁判所を介した調停や訴訟により適正賃料を確定させることとなります。賃料「減額」の場合もこれと同様であり、協議が調わない場合には、借地人の側において、地代減額請求権(借地借家法11条1項)を行使した上で、裁判所を介した調停や訴訟により適正賃料を定めます。

1 賃料増額請求

 賃貸借契約における賃料については、当事者がお互いに合意の上で、契約として定めたものである以上、仮にやむを得ない事情があったとしても一方的な変更は当然には出来ず、当事者間で改めて変更合意を行うことが原則です。

 しかしながら、貸主からみれば、賃料を適正額に増額の上、収支の改善を希望するのに対し、借主からすれば固定費の増額という負担を生じるわけですから、多くの場合、当事者間の利害は対立することになります。そのため、協議が長期化したり、任意では合意にいたらないということも残念ながら少なくありません。

 この場合には、地代について、借地借家法11条1項に定める地代増額請求権を行使することになります。ただし、賃貸借契約は継続的関係を前提としており、出来る限り話し合いによる解決を図ることが望ましいため、いきなり訴訟をするのではなく、その前提として裁判所を介して調停による手続で解決を図ることになります(調停前置主義、民事調停法24条の2第1項)。

 上記の調停でもなお解決が出来ない場合には、訴訟を提起することで、最終的に裁判所が適正賃料を決定することになります。

 地代の増額が認められるか否か、あるいはどの程度の増額が認められるかについては、固定資産税等の租税公課の増加の程度、土地価格の上昇の程度、経済状況の変動、近傍類似の土地地代との比較など総合的な事情を考慮することになります。訴訟の場面にまで行く場合、不動産鑑定によって適正価格を検討することもあります。

 なお、地代増額請求を行ってから正式な賃料が決定されるまでの間、借地人は、自己の相当と考える地代(一般的には現行賃料)を支払えば債務不履行にはなりません。

 ただし、裁判が確定した場合に支払金額に不足がある場合は、不足額に対して年1割の利息を付した上でこれを支払わなければいけません(借地借家法11条2項)。

2 賃料減額請求

 賃料の減額については、賃料増額と手続において大きく異なるところはなく、地代減額請求権を行使した後、調停・訴訟と手続が進んでいくことになります。正式な賃料が確定するまでの間、貸主は相当と認める額の賃料額を受領することができますが、裁判確定後、受領した金額に余剰がある場合は、借主に対し、年1割の利息を付した上で、これを借地人に支払わなければいけません(借地借家法11条3項)

3 小括

 賃料の改定は当事者間の利害が対立する場面であり、協議を進めていくことが困難な場合が多々あります。その上で、賃料の増額を求めていくにあたっては法的手続も見据えつつ賃料増額を根拠づける的確な資料を収集する必要があり、早期に専門家のアドバイスを受けることが重要です。

地代の増減額に関するトラブルの具体的な解決については、弊所にて迅速かつ適切なアドバイスを申し上げることが可能ですので、いつでもお気軽にご相談ください。

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