Q 弊寺では、今後所有している敷地について、希望する人への借地を検討しています。借地権を設定するにあたって、期間はどの程度を想定しておくべきでしょうか。
A 民法では、賃貸借の存続期間について、上限を50年としています(民法604条)。もっとも、本件で想定されるような土地の賃貸借は、通常建物所有目的になり、借地借家法の適用を受けるため借地権の種類にもよりますが、普通借地権の場合、最低30年以上であれば、自由に決めることが可能です(借地借家法3条)。
1 民法上の原則
建物所有目的によらない土地の賃貸借の場合、民法によって規律されるため、同604条から50年を上限として、その範囲内で決めることになります。
一見すると長期期間の賃貸借を認めているようにも見えますが、期間の下限について規律を定めているわけではないため、賃借人の側からすれば、土地を長期間利用したいと考えている場合に不便が生じ得ます。
2 借地借家法上の借地権
そこで、借地借家法では、建物の存続と借地人の生活の安定を保護するため、長期の借地権が確保できるように修正がなされています。
具体的には、普通借地権では、存続期間として、最低30年(借地借家法3条)、定期借地権であれば最低50年(借地借家法22条)、事業用定期借地権等であれば10年以上50年未満(借地借家法23条1項、2項)、建物譲渡特約付借地権であれば最低30年(借地借家法24条)と借地権の種類ごとに期間の細かな規定があるところ、事業用を除けば概ね30年が借地権の存続期間の下限になっていると考えてよいでしょう(これらを下回る期間を合意した場合は、上記の最低期間に修正されます。)。
なお、普通借地権の更新については、初回更新で最低20年、2回目以降の更新で10年より長い期間を設定する必要があります(借地借家法4条)。
3 小括
上記のとおり、建物所有目的での借地権設定は、借地借家法の適用を受けるため、借地権の種類ごとに最低期間の定めがあり、借地権設定者から見ると、比較的長期間安定した借地権収入が得られるメリットはありますが、借地借家法は更新等に関しても、借地人に強い保護を与えているため、安易に長期間の借地権を設定してしまうと、当該土地の利活用を困難にしかねない側面もあります。
したがって、定期借地権活用のほか、借地権を何年で設定するか自体も慎重に検討する必要があるといえるでしょう。これらの判断については、早期に専門家の助力を得ながら、ベストな方法を考えることが必要です。
弊所であれば、具体的な状況に応じ、迅速かつ適切なアドバイスを申し上げることが可能です。いつでもお気軽にご相談ください。