Q 弊寺にも檀徒が多くおりますが、檀徒とはそもそもどういう立場なのでしょうか。寺社に対する具体的な権利義務などはあるのでしょうか。また、寺檀紛争とは一体何でしょうか。
目次
1.檀徒とは
「檀徒」とは、一般的には、仏教の寺院または教会の奉ずる教義を信仰する者であり、自己の主宰する葬儀・法要等を永続的にその寺院ないし教会に委託する者のことを指します。
檀徒については宗教法人法上は単純に「利害関係人」(宗教法人法第25条3項)のひとつとしてのみ位置づけられていますが、沿革上は精神的にも物質的にも寺院の目的達成を援助する寺院の構成分子として極めて重要な地位とされます。これについては最高裁も「檀信徒は特別の場合を除いて寺院の基本財産、僧侶と共に寺院の構成分子を成し、しかも檀徒総代は其の最も重要な構成分子と解するを相当」と同様に判示しています(最判昭和35年6月2日)。
2.檀徒の権利
上述のとおり、宗教法人法上は檀徒は「利害関係人」としか定められておりませんので、各寺院における檀徒が具体的にどのような権利義務を有しているのかについては、各宗制や寺ごとの寺院法・規則、慣習などの定めによることになります。
檀徒の権利としては一般的に以下のようなものが掲げられています。
①檀徒として寺院の儀式行事に参加する権利
②檀徒会の一員として、檀徒会を通じて、寺院の重要事項の決議に参加したり、年会会計報告等を受ける権利
③檀徒総代の選挙権、被選挙権
②③のとおり、各檀徒は檀徒会や檀徒総代を通じて間接的に寺院の運営に関わることが期待されています。
3.檀徒の義務
檀徒として最も大切な義務として、精神面について、寺院の奉ずる教義を信仰する義務があります。
次に物質面としては、寺院の経費分担を担うべき義務があります。お布施・香料ないし香典、寄付などがこれに該当します。
4.寺檀紛争
寺院または住職、寺族と檀徒との間において紛争トラブルが起こることがあり、これを「寺檀紛争」と呼ぶことがあります。
寺檀紛争が起こる原因には様々なものがありますが、多くの場合は以下のケースに分類されます。
① 檀徒の金銭的負担にかかる紛争
お布施や戒名代が高すぎる、寄付を求められる回数が増えたなど、日常的な儀式行事を通じた金銭的・経済的な負担にかかる檀徒の不満がトラブルにつながるケースです。
② 住職の態度にかかる紛争
住職の檀徒に対する態度が横柄であるとか、総代と他の檀徒とで態度が違うなど、一時的なものではなく、長年にわたって徐々に鬱積してきた日常生活における不満が何かをきっかけに大きなトラブルに発展するケースです。
③ 寺院の管理権限に関する紛争
長い間住職が不在で檀徒総代が事実上寺院を管理経営していた状態が続いていた後に、新たな住職が入山してきて寺院の管理経営に着手してきた際に、その運営のやり方の違いで衝突が生じ、トラブルに発展するケースです。
④ 後任の住職の選任を巡る紛争
上記③と関連しますが、後任の住職を誰にするかについて、寺族と檀徒間での意見の食い違いがトラブルに発展するケースです。特に、規則上住職の選任手続で檀徒総代の署名押印が必要とされている場合により激しい対立となり易い傾向にあります。
5.本件ケースにおける対応
どの寺院にとっても、檀徒はすべからく精神的にも物質的にも寺院の目的達成を援助する寺院の構成分子として極めて重要なものとして認識する必要があります。
これを意識して日ごろから総代を含む檀徒と寺院・住職間の円滑なコミュニケーションを心がけて、円満な関係を築き上げておくことが寺檀紛争を回避する最良の策であることは言うまでもありません。実際にトラブルに発展してしまった後であっても、寺院側の言い分と檀徒側の言い分をじっくりと出して膝を突き合わせて話し合う機会を設けることが何よりも大切です。
寺檀紛争の具体的な解決については、弊所にて迅速かつ適切なアドバイスを申し上げることが可能ですので、いつでもお気軽にご相談ください。