お寺における地代の不払いトラブル

Q  弊寺は敷地の一部を第三者に貸しております。借地契約では毎月末日までに翌月分の地代を前払いしてもらうことになっているのですが、借地人がどうにもルーズな方で、2、3カ月遅れるのは当たり前で、ひどいときには半年分から1年分くらいの地代未納状態になってしまっています。弊寺としてもどうにも信用することができず管理に支障があるため、いっそのこと借地契約を解除して出て行ってもらえればとも考えています。ルーズな借地人への対応について注意すべき点はありますか。

1.地代不払いと信義則違反

 借地契約において、地代の支払い義務は借地人にとって重要かつ中心的な義務のひとつです(民法第601条)。

 借地人がその地代支払い義務を怠っている場合、地主としては借地人の債務不履行を理由に借地契約を解除することができます。

 その一方で借地契約の解除は借地人にとって生活の本拠地を失うことに直結しかねない重要な問題であることから、1か月分の地代の支払いを怠った等の軽微な違反によって直ちに契約を解除されてしまうことは借地人にとって不利益が大きすぎることになります。

 そこで、地主としては、地主と借地人間の信頼関係を著しく破壊される程度の背信行為に至った場合に限り、借地契約を解除することが可能となります。

 そこで次に、具体的に地代を何か月分滞納したら信頼関係が破壊される程度の背信性が認められ借地契約を解除できるようになるのか、が問題になるところです。

 これについては、建物の賃貸借契約の場合には一般的に連続して3カ月程度の賃料不払いが必要とされていることとの比較で、借地契約の場合にはこれよりも長期間にわたり6か月から12ヶ月程度の地代不払いの状況が必要と考えられています。また、地代の額が著しく低廉な場合で、地代の支払い時期も年に1回一括して支払うような形になっている場合には、2~3年にわたる地代滞納がないと解除は難しいところです。

 

2.支払い催告と解除の方法

 上記のように地代の未払状況が当事者相互間の信頼関係が破壊される程度にまで至っている場合、借地契約の解除を借地人に申し入れることになりますが、これに先立っては、地主から借地人に対して、相当期間(5日間~7日間程度)を定めて滞納地代を支払うことを求めて催告を行う必要があります(民法第541条)。

 地主が滞納地代の支払いを求めて借地人に催告をしたにもかかわらず、なお借地人がこれを無視して滞納地代の支払いを怠った場合、地主としては借地契約の解除をすることができます。

 なお、借地契約において債務不履行解除の場合には催告を必要とせずに直ちに解除することができる旨規定されている場合もあります。この場合であっても、借地契約の解除が借地人の生活環境に与える影響力の大きさと信頼関係破壊に至らない場合に契約解除の効力が否定され得ることを併せ考えれば、特段の事情のない限り、解除に先立って事前の催告をしておくことは必要と考えておくべきです。

 滞納地代の支払い催告と契約解除の意思表示については、方法に制限はなく口頭であっても一応は有効とされています。

 しかし、後になって言った言わないの水掛け論になる危険性があることから、これらについては証拠資料として利用できるように書面の形、特に内容証明通知書の体裁にて送付しておくべきです。

 上記一連の手続を経て地主が借地契約の解除をしたにもかかわらず、地主がなお退去しようとしない場合、地主としては訴訟等の法的手続を用いて強制的に借地人を退去させる必要があります。

 

3.本件ケースにおける対応

 本件においては借地人の現在及び過去の地代の滞納状況について確認したうえで、滞納分については速やかに借地人に支払いを求めて通知書を出すべきです(必要なタイミングで催告をしない場合、地主が地代の滞納を事実上黙示的に承認していたと解釈されてしまうリスクもあります。)。

 そのうえで、借地人の地代滞納状況が上記に照らして当事者相互間の信頼関係が破壊される程度にまで至っている場合、改めて借地人に対して借地契約の解除を通知して速やかな退去を求めることになります。

 それでもなお借地人が退去しようとしない場合には訴訟提起等を検討することになりますが、これには相当に専門的な知識経験が必要となりますので少なくともこの段階においては弁護士等の専門家にご相談されることを強くお勧めいたします。 

 

 借地契約の地代不払いトラブルの具体的な解決については、弊所にて迅速かつ適切なアドバイスを申し上げることが可能ですので、いつでもお気軽にご相談ください。

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