Q 弊寺の檀家の方から、「自分が亡くなったときは、同性のパートナーと同じお墓に入りたい」、「親族ではないが親しい友人と合葬してほしい」との相談がありました。お寺としてはこうした希望に応じるべきか迷っているのですが、宗教上や法律上の問題はあるのでしょうか?
1 寺社の裁量
墓地の使用者や合葬の可否については、墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)を含む法律により一定の制限はあるものの、宗教法人である寺院が自らの裁量で判断できる部分が大きいものとされています。
墓埋法においては墓地の設置や管理には都道府県の許可が必要ですが、誰と誰を一緒に埋葬できるかといった埋葬者の範囲までも国が法律により一律に制限しているわけではありません。
したがって、寺院の永代供養墓や合葬墓において、「親族でない者同士の合葬」や「同性パートナーとの合葬」を認めること自体は法的には特段問題ありません。
2 宗派や寺院ごとの教義・慣習との関係
親族ではない者が同じ墓を入れるにあたって、慎重に検討しなければならないのは宗派の教義や寺院での運用慣習、檀信徒との信頼関係との整合性です。
かつては、民間の霊園においても、公営の霊園においても、同一墓所に埋葬できるものについては使用者の近親者のみに限定するといった取扱い通常であり、結婚していない内縁の配偶者や親しい知人など、親族ではない者を同じ墓に入れることについては、事実上断られてしまうことがほとんどでした。
これは、親族以外の者を同じお墓に入れることで、お寺にとって埋葬者の管理記録が煩雑になってしまうことのほか、それぞれの親族同士でそのお墓の使用権の承継や管理義務などを巡るトラブルが発生しやすいといったお寺側の管理上の都合という理由が大きいところです。
しかし、最近では、計画的に子どもを作らない夫婦の増加や、LGBTQなど性自認の多様性により、あえて法律に基づく婚姻関係を結ばない事実婚状態の同性カップルなどが増えてきています。これに伴い、
このようないわゆる民法上の夫婦関係、親族関係にはないけれども、実質的にはそれと同等の非常に密接な関係にある者同士が死後に同じ墓に入りたいとの要望が急激に増加しているのです。
このような社会的実情の変化に応じて、ここ最近では民間霊園などにおいても、同じ墓に入れる者を親族その他近親者に限定せず、広く希望を受け入れるところも徐々に増えてきているようです。
3 まとめ
社会における実情の変化を受けて、同性パートナーや血縁でない者と同じ墓に入りたいと希望する市民の声は、今後もより一層増えていくことは確実に見込まれるでしょう。
こういった「同性パートナーや友人と同じ墓に入りたい」という希望は、現代における多様な価値観を反映した極めて正当な願いです。
寺院としても、寺としての教義や伝統を尊重しつつも、檀信徒との信頼関係を踏まえた柔軟かつ慎重な対応が求められていく場面といえるでしょう。
これについては、それぞれのお寺において、墓地使用規則等のなかで、同性パートナーや血縁ではない者と同じ墓に入れることの是非についてあらかじめ明文化しておくことで、お寺としての考え方を檀信徒とともに共有しておくことが何より重要となります。
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