永代供養墓とは?中途解除トラブルと返還金額を弁護士が解説

Q お墓のタイプとして、これまでの「永代使用権」による墓地使用権とは別の形として、最近では「永代供養墓」というのが増えてきているようですが、「永代供養墓」とはどのようなものをいうのでしょうか?従前の「永代使用権」とは何が違うのでしょうか?

 1 墓地使用権の法的性質

  一概に「墓地使用権」と言っても法律の明文で決められているものではありませんので、法律上の明確な定義などは存在しません。この墓地使用権は寺院との個別の契約によって成立する権利であるところ、その法的性質についても「無名契約に基づく永代借地権」または「慣習上の物権」、「土地の使用貸借契約に基づく使用借権」など諸説があり、判例上においても明確に定まっておりません。

 かように、墓地使用権の法的性質にはその解釈上様々な考え方がありますが、いずれの考え方によったとしても墓地使用権の永続性を前提としており、祭祀承継者が存在する限り、契約期間の定めの有無にかかわらず半永久的かつ永続的に墓地を使用することができるものであることから、墓地使用権については「永代使用権」とも呼ばれます。  

  この「永代使用権」については祭祀承継者が将来にわたって永続的に墓を継承していくことを前提としたシステムになっています。

 

 2 「永代供養墓」とは

  その一方で、近年では晩婚化や少子化、家族観の変化など様々な事情を背景に、祭祀承継による墓の継承を前提としない「永代供養墓」というシステムが登場し、徐々に増加の一途をたどっています。

 永代供養墓は、永代使用権とは異なり、祭祀承継者による墓の継承を予定しておらず、祭祀承継者に代わって墓地の運営者が死後の管理や供養を行っていくことを前提としています。その意味で、永代供養墓とは、墓を継承させることを希望しない人のために墓地や納骨堂を提供し、管理や供養については全て墓地や納骨堂の運営者が永代にわたって行うタイプの墓ということができます。

 

 3 永代供養墓の形態

 このような永代供養墓の形態も様々であり、個人墓、夫婦墓、集合墓の種別のほか、墓地に収蔵するタイプ、納骨堂に収蔵するタイプなどがあり、墓の形やタイプを問わないのが特徴です。「供養」の定義もまちまちであり、何をもって「供養」とするのか(毎年個別に法要を行うのか、年に1度合同で法要するのか、初めから合祀するのか、一定期間個別に納骨した後一定期間経過後に合葬墓に焼骨を移すのか)などについては寺院間の個別の契約内容によって大きく異なります。

 永代供養の形自体が寺院によってまちまちですので、これに伴ってその料金体系についても寺院ごとに大きく異なっています。ただ、永代供養墓の料金体系においては、概ね「永代使用料」、「永代管理料」、「永代供養料」、「墓石代」、「開眼・納骨費用」、「遺骨の引取り料」などが項目として含まれているのが一般的です。

 4 永代供養墓の契約について中途解除された場合の返金の有無とその金額

 既に述べたとおり、墓の継承を希望せずに永代供養墓を利用する人たちが最近は増えています。これに伴って、永代供養墓の管理委託契約を寺院との間で締結した後になってから、その生前において「まだ墓地を使用していないし返還するから永代使用料等を返して欲しい」と寺院に求めてくる金銭トラブルが頻発してきています。その理由としては、寺院との信頼関係の破壊や他に良い墓地が見つかったからなど様々あるでしょう。

 この場合において、寺院としては、墓地を返還してもらった以上、永代使用料についてもそのまま全額返還しなければならないのでしょうか。

 これにつき、永代供養墓にかかる寺院との管理委託契約や管理規約において「永代使用料については返還しない」と明記されている場合、当該規定も有効ですので基本的にはそれに従うことになります。

 ただ、いかなる場合であっても一切返還しないとの取扱いは公平性の観点から妥当ではないところです。この点については、平成12年12月付厚生省生活衛生局長『墓地経営・管理の指針等について』(生衛発第1764号)における墓地モデル契約約款でも、墓地の永代使用契約の解除については、

  「1 使用者は、書面をもっていつでも契約を解除することができる。

  2 前項の場合においては、使用者は既に支払った使用料及び管理料の返還を請求することはできない。ただし、墓所に墓石の設置等を行っておらず、かつ焼骨を埋蔵していない場合において、使用者が既に使用料を納付しているときは、契約成立後〇日以内に契約を解除する場合に限り、経営者は、当該使用料の〇割に相当する額を返還するものとする。」

とされているところです。

 次に、一部返金することにしたとしてその返金割合をどの程度とすべきかが問題となりますが、これについては東京都霊園条例第15条が参考になります。同条は「既納の使用料及び管理料は、還付しない。ただし、知事は、相当の理由があると認めるときは、その全部または一部を還付することができる」と定め、例外的に使用料の一部還付の場合を認めています。

 そして、東京都霊園条例施行規則第14条1項において、一部還付の場合の例外的場面として「埋蔵施設または長期酒造施設の使用者が許可を受けた日から3年以内に条例第16条の規定による届出及び原状回復を行ったとき」に「使用料の半額」を返金すると規定しています。

 要するに、東京都は「墓地の申し込みをしてから3年以内に墓地を使用しなくなった場合には使用料のうち50%の返金には応じる」との取扱いをしており、本件でも参考になるところです。

 個別のケースにおいて具体的にいくら返還するべきかについては、永代供養墓の管理委託契約を解消するに至った事情、どちらの責任で終了に至ったのか、責任の程度、墳墓設置の有無、納骨の有無、契約締結からの期間、宗教法人の規模と財務状況など諸般の事情を総合的に考慮したうえで、公平性の観点から合理的な金額を判断することになります。

 5 本件ケースにおける対応

 かように、「永代使用権」による墓地使用権と「永代供養墓」とは似ているようで大きく異なった墓地形態です。当然のことながら、その契約内容についても使用規則についてもその違いをきちんと理解したうえで使い分けなければならないところです。この点を混同してしまうと、寺院と檀信徒間の無用なトラブルを惹起し、ひいては相互の信頼関係の破壊に繋がりかねませんので十分に注意が必要です。

 永代供養墓を含む墓地トラブルの具体的な解決については、弊所は下記のようなサポートを提供することが可能です。

・永代供養墓契約書の作成
・永代供養墓契約書のリーガルチェック
・永代供養墓使用規則のリーガルチェック
・中途解約トラブルの対応

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