散骨とは?お寺が散骨を行う際に注意しておくポイントを解説

Q 弊寺では、通常のお墓への遺骨の埋蔵のほかに、最近ニュースでよく聞くようになった「散骨」も取り入れたいと思っています。散骨を行ううえで注意しておくべきポイントがあれば教えてください。

1 「散骨」とは

 一般的に死者を埋葬するための方法としては、「火葬」、「土葬」、「水葬」の方法が古くからわが国では行われてきました。これに加えて近年では、「散骨」や「樹木葬」といった新しい方法も行われるようになってきました。

 「散骨」とは、焼骨をお墓に納めるのではなく、海や山野などに遺灰を撒く葬法をいいます。

 散骨については、墓地、埋葬等に関する法律(以下「墓埋法」といいます。)が想定していない新しい埋葬方法であり、その具体的なやり方については墓埋法上にも明確な基準は定められておりません。ただ、現状としては大きく以下のような方法による散骨が多く執り行われています。

  ①山野での散骨

  ②船で沖合いの散骨地点まで移動したうえで行う、海上での散骨

  ③ヘリコプター等で海上まで移動したうえで空から遺灰を撒く、空での散骨

2 散骨と墓埋法

 墓埋法においては、死体をそのまま土中に葬ることを「埋葬」、死体を葬るために焼くことを「火葬」とそれぞれ定義したうえで、土葬と火葬の方法については具体的な手続を定めています。

 しかし、上記のとおり、散骨は新しい埋葬方法であり、墓埋法においては具体的な実施のための手続は定められていません。

 墓埋法4条1項は「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行ってはならない」と明記されているところ、ここにいう「焼骨の埋蔵」とは「焼骨を土中に葬ること」を指しています。

 つまり、墓埋法は焼骨を土中に埋蔵する場合の規制をするものであって、海や山野に焼骨を撒く「散骨」について定めるものではなく、散骨自体は直ちに墓埋法に違反するものではないと一般的に解釈されています。

  

3 散骨と刑法

 刑法は「死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3年以下の懲役に処する」として死体損壊罪を規定しています(刑法190条)。

 散骨の実施においては、遺骨を海や山野に散布することから「遺骨」を「遺棄」するものとして死体損壊罪に抵触しないかが墓埋法とは別途に問題になります。

 この点については、死体損壊罪の保護法益が国民一般の宗教的感情ないし健全な宗教的風俗であることに照らせば、遺族等が故人の意思に沿う形で遺骨を散布する散骨は、それが相当な方法かつ場所で実施される限り、死体損壊罪には該当しないものと考えられています。

 具体的には、散骨葬をする際には、焼骨を人骨だと一見して分からないよう細かく粉砕する、できるだけ他者の目にふれない方法で行うなどその「方法」に注意することに加え、事前の承諾を得ることなく他人の所有地で散布しない、近隣の住環境や自然環境に十分配慮するなど、その「場所」についても慎重に検討する必要があります。

4 まとめ

 以上のとおり、散骨自体は、相当な方法かつ場所で行われる限り、墓埋法に抵触するものでも死体損壊罪に該当するものでもなく、法律に違反するものではありません。

 とはいえ、散骨は地元の農家や漁業関係者など人骨をばら撒かれた側からすると不愉快な感情を抱く部分も否めず、土地所有者や近隣住民とのトラブルになる可能性が高い葬法であることも事実です。

 それゆえ、地方公共団体によっては法律以外の「条例」によって散骨を禁止または制限するところも多く存在しています。例えば、埼玉県秩父市では「何人も、墓地以外の場所で焼骨を散布してはならない。ただし、市長が別に定める場合は、この限りではない」として、散骨の原則禁止を掲げています。

 散骨を実施する際には、散骨を予定している地方公共団体に事前に問い合わせたうえで、散骨が可能か、可能であるとしてどのような制限が付されているかについてきちんとその詳細を確認しておくことが必要不可欠となります。

 散骨の相当な方法及び場所での実施については、弊所にて迅速かつ適切なアドバイスを申し上げることが可能ですので、いつでもお気軽にご相談ください。

03-3519-3880 メールでのご相談はこちら