寺社における墓地区画の新設と拡張

Q 弊寺では従前の墓地区画が狭くなってきたために、墓地区画の拡張や新規設立をしたいと考えております。墓地の新設や拡張をするにあたって注意しておくべきポイントがあれば教えてください。

 1 墓地を拡張する具体的方法

 最近では急速に高齢化社会が広がっている関係で、東京をはじめとする都市圏において深刻な墓地不足が問題となっています。

 そのような場合、お寺としては墓地を拡張するか、新規に設立することになりますが、墓地の新設・拡張するにあたっては具体的には以下のような方法があります。

   ① 既存の墓地区画の隣接地に墓地を拡張する。

   ② 新たに墓地区画を新設する。

   ③ 既存の墓地を区画整理する。

 2 隣接地への墓地の新設・拡張

 墓地区画を拡張または新規に開設することは、地方公共団体自身がする以外には公益法人(社団法人、財団法人)か宗教法人だけにしか認められていません。

 墓地の新設・拡張のためには墓地の経営許可の申請をする必要がありますが、これについては都道府県知事(または市町村長等)に対して行うことになります。墓地の経営許可については、その地域に十分な需要数が見込まれていること、墓地経営に永続性があることなどの条件を満たさなければなりません。

 墓地区画の拡張または新設の許可基準については、都道府県や市町村の各条例にてそれぞれ定められています。墓地の設置については近隣住民の宗教的感情や風土文化などによって大きく異なりますので、全国一律の画一的基準を設けることになじまないことからそれぞれ地域ごとの条例にこれを委ねることにしたのです。具体的には、100メートル以内の住民から承諾を得ること、近隣住民向けの説明会を実施すること、付近に学校その他公共施設がないこと等が許可基準として定められています。

 なお、既に述べたとおり、墓地経営の許可を得ることができるのは宗教法人などに限定されていることから、形式的には宗教法人を墓地経営の主体としながらも実質的には宗教法人以外の企業が霊園事業を行うといった「名義貸し」による墓地経営が問題になり得るところです。寺院としても自己資金によらずに墓地区画を取得できる点でメリットもあるところですが、計画通りに分譲できなかった場合の責任問題などリスクも大きいところです。

 いずれにせよ、寺院としては墓地区画の新設・拡張に際しては十分慎重に計画のうえ実行しなければなりません

 3 既存墓地の整理

 墓地不足の問題にあたっては上記①②のように隣接地に拡張または新規設立するのが分かりやすいところです。ただ、特に大都市にある寺院などでは近隣に墓地区画に適した広い土地が偶然空くということはなかなかありませんし、何よりも新規に土地を取得したうえで設立・拡張の造成工事をするということは資金繰りの問題も無視できません。

 そこで、墓地不足解消のための①②以外の方法として、既存の墓地区画を改めて整理することが考えられます。

 特に過去に土葬の墳墓を主体にしていたような古くからある寺院の場合は、火葬墳墓のように四角く整然と囲われた墓地とはなっておらず、墓地全体に雑然と墳墓が設置されているケースが少なくありません。

 そのような墓地については整然と整理することによって新たな墓地を設置するスペースを作り出すことができ敷地を有効活用することができるうえ、きれいに区画整理された墓地は景観的にも良い効果が期待できます。

 墓地区画の新設と拡張または既存墓地の整理にかかる問題の具体的な解決については、弊所にて迅速かつ適切なアドバイスを申し上げることが可能ですので、いつでもお気軽にご相談ください。

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