墓地管理料未払いへの対応

Q 弊寺が管理している墓地について、何年間もの長期間にわたって管理料を支払っていない利用者がおり困っています。電話を架けても繋がらず、郵便物を送っても不在で返送されてくる状況です。お寺としてはどのように対応すべきでしょうか。また、このまま放置された墓地について、お寺として墓地使用契約を解除して、墓石と遺骨を撤去しても良いのでしょうか。

1 墓地管理料の滞納問題

寺院として墓地を運営している以上、使用者の墓地管理料の滞納トラブルは避けて通ることができない問題です。特に近年は、少子高齢化による祭祀承継者の不在、地方から都市部へ移住することによる檀家離れ、親族間の相続紛争による遺産分割未了などを背景として、数年単位で管理料の支払いが滞るケースが増加しています。

もっとも、墓地使用権は「固定性」と「永続性」を備えた宗教的性格を有する権利であることから、通常の不動産賃貸借契約のような感覚で安易に契約解除や墓石撤去を行うことは極めて危険です。

寺院としては、墓地使用者との間で墓地使用契約を締結しており、この契約書の中で1区画あたり年間1万円前後の管理料を支払う約束となっているのが一般的です。

墓地管理料は1件あたりではそれほど高額ではありませんが、墓地管理は墓地使用者が管理費用をしっかりと支払うことによって成り立つものです。1件の滞納者を見過ごすことで次から次へと滞納者が続出しては寺院としての墓地運営が早晩成り立たなくなることは明白ですので、寺院としてはたとえ1件のみの少額の滞納であったとしても、決して見過ごすことなく毅然とした態度で、それでいて丁寧に対応していく必要があります。

なお、墓地管理料については未納から5年間で時効により消滅してしまいますので(民法第166条1項1号)、寺院としては管理料支払い台帳などにてしっかりと管理することを強くお勧めします。

2 墓地管理料の請求方法

(1) 所在調査と記録確認

使用者が墓地管理料を長年滞納している場合、まず寺院として行うべきは、使用者の住所や電話番号などの所在調査です。

墓地使用契約の名義人がご存命であり連絡が取れれば何の問題もないのですが、実際には、契約当時の住所から転居していて転居先が不明、契約名義人が既に亡くなっていて祭祀承継者が誰か分からないといったケースが非常に多く見られます。

使用者の所在調査のために、まず寺院においては以下のような資料を確認します。

 ・墓地使用契約書、墓地使用申込書

 ・檀信徒名簿(緊急連絡先など)

 ・過去の支払履歴資料

それでも連絡先が不明の場合は、弁護士等に依頼したうえで戸籍や住民票を取得して調査することもあります。

なお、寺院側にて使用者の所在につき十分な調査をしないままに安易に墓石や遺骨を撤去することは不法行為に該当するおそれがあり、後に使用者が現れた場合に損害賠償請求等をされてしまう危険性があります。寺院としては使用者の所在調査については時間をかけて十分に尽くすようくれぐれも注意してください。

(2) 請求書の発送及び電話連絡

上記(1)にて使用者の所在が確認できた後、寺院としては使用者に対して管理料滞納の事実及び早急に支払われたい旨の督促請求書を送付することになります。まずは普通郵便で出すのが一般的ですが、滞納金の支払いと併せて墓地使用契約自体を解除する場合や使用者の態度等によっては内容証明郵便で出すこともあります。

なお、上述のとおり、墓地使用契約は「固定性」と「永続性」を重視するものであり、寺院と使用者の信頼関係が破壊されたと評価できた場合に初めて解除が認められるものです。それゆえ、1年程度の滞納のみではなお契約解除を認めるには短きに過ぎる場合が多いところですので、契約解除を視野に入れるのであれば最低でも2年、できれば3年程度の滞納期間があった方が望ましいでしょう。

請求書を発送した後に、使用者と電話にて話をし、未払い管理料の支払いを求める一方で、どうしても管理料が支払えないということであれば、その理由を確認したうえで分割払いにするのか、減額での一括処理にするのか等の解決方法を話し合うことになります。

寺院として最も重要なのは、まずは話し合いによる穏便な解決を目指すということです。

寺院としては管理料をきちんと支払ってもらえなければ困りますが、使用者の方にも経済的困窮や病気、遠方居住、親族間対立による相続未了など様々な事情を抱え、管理料を支払いたくても支払えないということもあり得ます。

そのため、使用者の状況によっては、分割払いや一時猶予、合祀墓への移行、あるいは墓じまいなど、寺院と使用者の双方が納得する解決方法を柔軟に検討していくことが肝要です。

寺院としても、管理費が滞納しているからといっていきなり法的措置へ進むのではなく、誠実に協議を重ねて解決努力を尽くすこと、そしてそれを客観的資料として残しておくことが大切です。

(3) 法的手続

かような話し合いによってもなお滞納金について支払ってもらえない場合、寺院としては、他の使用者との公平性維持や墓地運営上の観点からもやむを得ませんので、最終手段として、未払い管理料の支払いや契約解除に伴う墓石の撤去等を求めて民事訴訟を提起することになります。

もっとも、ここで注意すべきは、寺院側にて十分な事前対応を尽くしていることを客観的資料に基づいて説明できる状態になっているかです。

裁判所としては、訴訟手続の中で、墓地使用契約書の内容はもちろんのこと、墓地管理規定の整備状況や使用者への督促状況と履歴、話し合いの経過状況、責任役員会における議決状況などをしっかりチェックします。宗教法人たる寺院として、寺院規則等の内部規定に則った適正な手続をもって運営されているかが重要となります。

そのため、申込者との間では口頭だけでやり取りしていて記録がない、書類関係が一切残っていないうえに墓地管理規定も十分に整備されていないという状況では、訴訟手続において寺院側に不利益に働く可能性が高いところです。

なお、使用者と連絡が取れない、または連絡が取れても合意ができないからといって、寺院の判断で勝手に墓石の撤去や焼骨を移動させることについてはくれぐれもしないように注意してください。

焼骨の移動については墓埋法に基づく「改葬」に該当するところ、改葬は所轄市町村長の改葬許可がなければ行うことはできないとされています(墓埋法第5条1項)。

そして、寺院を含めて墓地使用者以外の者が墓地使用者の改葬の許可を受けようとする場合には「裁判の謄本」を申請書に添付することが求められています(墓埋法施行規則2条)。

つまり、寺院としては焼骨を移動させて改葬するためには墓地使用契約の解除とこれに伴う墓地明渡し訴訟を提起する必要があり、使用者の了承なく勝手に焼骨を移動させたり墓石を撤去したりすることはできないのです。

3 本件ケースにおける対応

墓地管理料の滞納問題については、単に未払い金を回収すればよいというものではなく、墓地使用権や祭祀承継、改葬手続など宗教的・法的問題が複雑に絡み合う極めて慎重な対応が求められる分野です。

寺院としては、まず使用者の所在調査や戸籍確認を行い、督促状の送付や話し合いによる解決を丁寧に尽くす必要があります。それでもなお支払いがなされない場合には、未払い管理料請求訴訟や墓地明渡請求訴訟などの法的措置を検討することになりますが、それに先立って、墓地使用契約書や管理規程、督促履歴、責任役員会の議事録など、寺院側が十分かつ適切な手順を踏んでいることを客観的資料によって示せる状態に準備しておくことが極めて重要です。

墓地管理料滞納問題は、民法・墓埋法・宗教法人法などが交錯する極めて専門性の高い問題であり、寺院側にて対応を誤ると後に大きな紛争へと発展する危険性もありますので、お困りの際は寺社法務に詳しい弁護士へ早期に相談することをおすすめいたします。

墓地管理料の未払いトラブルの具体的な解決については、弁護士法人 永 総合法律事務所にて迅速かつ適切なアドバイスを申し上げることが可能ですので、いつでもお気軽にご相談ください。                           

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