寺社におけるペット霊園

Q 弊寺では愛玩犬としての犬や猫が亡くなった際にこれを供養するためのペット専門の霊園を新設したいと考えております。ペット霊園を運営していくうえで注意しておくべきポイントがあれば教えてください。

1.ペット霊園と墓埋法

亡くなったペットの供養を行う場合、概ね以下のような一連の業務を行うことが考えられます。

 ① ペットの遺骸を火葬設備に運搬する業務

 ② ペットの葬儀を執り行う業務

 ③ ペットの遺骸を火葬する業務

 ④ ペットの供養を行う業務

 ⑤ ペットの焼骨を保管する業務

 

一般的に、寺社のペット霊園にて行う業務としては上記のうち②ペットの葬儀を執り行う業務、④ペットの供養を行う業務、⑤ペットの焼骨を保管する業務の3つが通常がと思います。

なお、墓埋法における「死体」(第2条)とは「人間」の死体を指すものであり、「焼骨」(第4条1項)とは「人間」の遺体を火葬した際のお骨を指すものです。

それゆえ、人間ではないペットの遺体やお骨については、墓埋法における「死体」や「焼骨」に該当しませんので、ペット霊園の設立運営においては墓埋法の適用はありません。墓埋法第10条1項にて「許可」が必要とされる「墓地、納骨堂又は火葬場」にも該当するものではありません。

 

2.ペット霊園とその他法律、条令

しかしながら、ペット霊園の設立運営に際しては墓埋法以外の法律、条令等に抵触しないかについても十分注意する必要があります。

具体的には、土地の使用態様については都市計画法や農地法における用途制限や用途規制に違反しないようにしなければなりません。また、ペット霊園に併設する管理事務所等の建物については建築基準法や消防法等の規制に則ったものにする必要があります。

加えて、ペット霊園の造成にかかる開発規制、ペットの火葬にかかるばい煙、悪臭等の環境永衛生面からも各自治体が条例を定めている場合、これにも十分に留意する必要があります。

 

3.ペット霊園の収益事業性

寺社によるペット霊園における供養について、最高裁は以下のとおり一般的には「収益事業」(法人税法第2条13号)に該当するものと判示しております。

「宗教法人が死亡したペットの飼い主から依頼を受けて葬儀、供養等を行う事業が、請負業、倉庫業及び物品販売業並びにその性質上これらに付随して行われる行為の形態を有する場合において、上記事業においては、依頼者は、パンフレット及びホームページに掲載された料金等により定められた金額を当該宗教法人に支払っているものであり、これに伴う金員の移転は、当該宗教法人の提供する役務等の対価の支払として行われる性質のものとみるのが相当であること、上記事業は、その目的、内容、料金の定め方、周知方法等の諸点において、宗教法人以外の法人が一般的に行う同種の事業と基本的に異なるものではなく、これらの事業と競合するものであることなど判示の事情の下では、当該宗教法人がペットの供養をするために宗教上の儀式の形式により葬祭を執り行っていることを考慮しても、当該宗教法人の前記事業は法人税法2条13号所定の収益事業に当たると解するのが相当である。」(最判平20・9・12判時2022号11頁)

したがって、寺社によるペット霊園事業については、その実施方法にもよりますが、基本的には収益事業に該当するものとして法人税が課税されることを前提に経営しなければならない点に十分注意する必要があります。

 

ペット霊園の設立、施設維持等については、弊所にて迅速かつ適切なアドバイスを申し上げることが可能ですので、いつでもお気軽にご相談ください。

03-3519-3880 メールでのご相談はこちら