Q 最近、「反社会的勢力」との関係を排除しようという社会的風潮になっていますが、寺社としては「反社会的勢力」を排除するためにはどのような対応をすればよいのでしょうか?
1.「反社会的勢力」とは
企業においてはCSR(企業の社会的責任)が声高に叫ばれ、昨今では暴力団との取引など一切の関係性を持たないことが強く求められています。
これについては寺社といえども当然に当てはまるものであり、寺社には高い公益性、公共性が求められているとはいえども、暴力団などの反社会的勢力との関わりをもっては社会からの信用は一気に失墜してしまいます。
ここにいう「反社会的勢力」とは、暴力や威力、または詐欺的手法を駆使した不当な要求行為により経済的利益を追求する集団又は個人の総称を指します。具体的には、暴力団や暴力団員、暴力団準構成員などが分かりやすいところですが、それ以外にも暴力団関係企業、総会屋等、社会運動等標ぼうゴロまたは特殊知能暴力集団等、その他これらに準ずる者も含め広く「反社会的勢力」と解釈されています。
2.暴対法や暴力団排除条例
「反社会的勢力」の排除については、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(いわゆる「暴対法」)や、全ての都道府県で施工されている暴力団排除条例(いわゆる「暴排条例」)で厳しく定められています。
これらの法律や条例での目的は大きく以下の3つです。
① 社会全体で協力して暴力団を排除すること
② 宗教法人を含め事業者は、各種契約を締結するに際には相手方が暴力団関係者であると判明した時点で無条件で契約解除できる条項(暴力団排除条項)を明記すること
③ 暴力団に対する利益供与などその活動を助長する行為をしないこと
3.暴力団排除条項の追記
寺社としても、様々な場面で日常的に業者と取引をすることがありますが、その際に用いる契約書では反社会的勢力の排除を目的とした「暴力団排除条項」を分かりやすい形で明記しておく必要があります。
「暴力団排除条項」の内容としては一般的に以下のようなものがあります。
「第×条(反社会的勢力等の排除)
1 甲および乙は、現在および将来にわたり、次の各号のいずれにも該当しないことを表明し、保証する。
①暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、社会運動等標ぼうゴロまたは特殊知能暴力集団その他これらに準ずる者(以下これらを「暴力団員等」という)。
②暴力団員等に経営を支配され、または経営に実質的に関与されていると認められる関係その他社会的に非難されるべき関係にある者
③ 自己もしくは第三者の不正利益目的または第三者への加害目的等、不当に暴力団員等を利用していると認められる関係にある者。
④ 暴力団員等への資金等提供、便宜供与などの関与をしていると認められる関係にある者。
⑤ 犯罪による収益の移転防止に関する法律において定義される「犯罪による収益」にかかる犯罪(以下犯罪という)に該当する罪を犯した者。
2 甲および乙は、自らまたは第三者を利用して次の各号の一にでも該当する行為を行わないことを確約する。
①暴力的または法的な責任を超えた不当な要求行為。
② 脅迫的な言動、暴力を用いる行為をし、または風説の流布、偽計もしくは威力を用い相手方の信用を毀損し、または相手方の業務を妨害する行為。
③ 犯罪に該当する罪に該当する行為。
④その他前各号に準ずる行為
3 甲または乙が前2項に違反したときは、第5条第①号に該当するものとし、同条に基づく本契約の解除により違反当事者に損害が生じた場合にも、その相手方は何ら責任を負わない。 」
4.本件ケースにおける対応
宗教法院たる寺社としては暴力団を含む反社会的勢力との関係性は一切持ってはなりません。
組織的ではなく個人として死者を悼み、弔うための法要などについては暴対法や暴排条例が禁止する反社会的勢力との取引に該当しない可能性もあります。
ただ、どのような法要が組織的なものか否かの区別の基準は極めてあいまいな部分がありますので、反社会的勢力に該当する疑いのある法要その他取引については速やかに弁護士や警察署に相談することとし、くれぐれも安易に取引を開始することのないよう慎重に対応することが必要です。
反社会的勢力の排除等トラブルの具体的な解決については、弊所にて迅速かつ適切なアドバイスを申し上げることが可能ですので、いつでもお気軽にご相談ください。